Ⅲ.真実を伝えない日本の新聞、報道と言論統制(常習的な朝日の虚偽報道癖)
1.朝日新聞の虚偽報道に関する公開質問状
以下、そのまま掲載します。
朝日新聞社社長 箱島伸一様 1999年3月26日
藤岡信勝(東京大学教授)
東中野修道(亜細亜大学教授)
「アサヒ・イブニング・ニュース」掲載記事に関する公開質問
拝啓
時下、益々ご清栄のこととお慶び申しあげます。
早速ですが、本題に入らせていただきます。
(一)貴社発行の英字紙「アサヒ・イブニング・ニュース」の2月19日付紙面に、「NANKINGBOOK IS SHELVED」と題する記事が掲載されました。この記事は、貴社のご説明では朝日新聞同日付の記事の英訳だとのことです。
確かに、英字紙の記事には「Asahi Shimbun」のクレジットが付けられております。しかし、英字紙の記事は本紙の記事の単なる英訳だとは到底考えられません。なぜなら、英字紙には本紙には書かれていない事実、すなわち、アイリス・チャン『ザ・レイプ・オブ・南京』の日本語訳の出版が右翼の脅迫によって延期されたということが書かれているからです。
私たち両名は、3月3日、同上訳書の版元である柏書房を訪れ、同社の佐保勲出版部長に面会し、右翼の脅迫と訳書の出版延期に関する同社の決定との間には何の関連もないことを確認いたしました。また、月刊誌『創』四月号には、「困ったのはその後、出版延期が右翼の脅しがあったからだと報道されたこと。実際は著者による出版妨害だったのです」という同社・芳賀啓編集長のコメントが掲載されています。このように、訳書の刊行が著者自身の働きかけによるもので、右翼の脅迫によるものではないことは確定した事実です。
「アサヒ・イブニング・ニュース」紙の上記記事は明白な誤報です。
しかるに、アメリカの新聞「ロサンゼルス・タイムズ」は3月1日付の社説で、「出版社に対する極右の脅迫を受けてこの出版は無期延期された」と書きました。日本の英字紙「ジャパン・タイムズ」は3月3日付でこの社説を転載し、日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』は3月17日付で無批判にこの社説を紹介しました。現地では全く否定されていることが海外に報道されることによって「事実」となるという、この構図は、私たち両名のうちの一人である東中野が昨年刊行した著書『「南京虐殺」の徹底検証』(展転社)などで明らかにしたように、61年前に「南京大虐殺」が捏造された経過と全く同じものです。
3月5日付の地方紙に掲載された共同通信配信記事によれば、アイリス・チャンは「歴史問題に絡むと、右翼などの圧力で日本には言論の自由がない。日本では出版できないだろう」と(自分の出版妨害を棚に上げて)語ったとされています。日本は「言論の自由」のない国だという虚像が国際社会にばらまかれることは日本の国益にとっては由々しい事態といわなければなりません。
さらに、この問題は日本の国際的評価に関わるという意味で重大であるばかりではなく、私たちにとっては、貴社の社員によって加えられた個人的な中傷に対して自己を防衛するという意味でも重大な関心を持たざるを得ない問題です。
2月25日、私たち両名のうちの一人である藤岡は、日本外国特派員協会の昼食会に招かれ、日本の歴史教育について講演しました。その席上、「アサヒ・イブニング・ニュース」記者で英国人のピーター・マクギル氏は藤岡に対し次のように発信しました。
「あなたは今、この国の右翼暴力団のヒーローになっている。連中は出版社を脅迫し、暴力や殺人までやってきた。彼らは自由な言論の敵であり、民主主義の敵である。こういうことと、あなたがわれわれすべての納税者の税金でまかなわれている有名大学の教授であるということとは両立するのか」。マクギル氏は日本外国特派員協会の会員であり、藤岡はその会に招かれたゲストであります。
そのゲストに対し、公的な場で、貴社の社員によってなされた上記の如き発言は許し難い中傷であり、絶対に容認することはできません。
結局、「アサヒ・イブニング・ニュース」は、第一に、ありもしない「右翼の脅迫による出版延期」という事実を2月19日付の記事によって捏造した上に、第二に、その「右翼の脅迫」を同社の社員である外国人記者が藤岡の名前と結びつけたのです。このことによって、この一件は、私たちの名誉を守るためにも避けて通れない問題となりました。
以上の経過は、藤岡執筆の「『南京翻訳書』を巡る謀略報道」と題する3月26日産経新聞「正論」欄の文章で簡潔に述べていますので、ご参照いただければ幸いです。
(二) 3月25日午前、私たちは藤岡名で「アサヒ・イブニング・ニュース」編集部に質問状を送りました。同日昼頃、この件は貴社広報室の担当となった旨の連絡がありました。同日夕刻、私たち両名は貴社を訪問し、副広報室長の○○○○氏から別紙の回答文書を受け取り、若干の説明を受けました。その主旨は一言で要約すれば、翻訳の英文は外国人記者が書いたが、「右翼の脅迫で出版が延期になった」という趣旨の記事ではなく、「新聞制作上」の技術的な制約から結果的に私たちの指摘するような点が生じたとするものです。これは、率直に言って、誰も納得させることのできない奇弁と申し上げるしかありません。この件については、いつでも証明する用意があります。
そこで、朝日新聞社を代表する最高責任者である貴殿に以下の諸点をあらためてお尋ねしたく、すみやかにご回答を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
(1) 2月19日付「アサヒ・イブニング・ニュース」に掲載された「NANKING BOOK IS SHELVED」と題する記事には、冒頭に「消息筋が木曜日[2月18日]に語ったところによれば、東京の出版社が電話や手紙による脅迫を受けて、『ザ・レイプ・オブ・南京』の日本語版の出版を延期した。柏書房が語ったところによれば、手紙のうちの一通は極右グループの構成員を名乗る男からのものであった。その脅迫状には『出版すれば何らかの行動を起こす』と書かれていた」
とある。これは、右翼の脅迫が出版延期の理由であるとする誤報であることをはっきり認めていただきたい。
(2) 2月19日付朝日新聞記事にない事実を付け加えて「翻訳」した「アサヒ・イブニング・ニュース」所属の「外国人記者」の氏名を公表し、かつ、この件についての貴社の責任を明らかにしていただきたい。
(3) 上記誤報が世界に広がっている現状を改善するため、「アサヒ・イブニング・ニュース」ならびに朝日新聞本紙の紙上にて、謝罪と訂正の記事を出し、日本の内外で利用されている貴社のデータベースの利用者にも誤解が生じないような措置をとっていただきたい。
(4) 2月25日の日本外国特派員協会昼食会の席上におけるピーター・マクギル記者の言動の妥当性について、貴殿の見解を明らかにしていただきたい。
(5) 今後、この種の謀略的報道を行わないことを確約していただきたい。
以上の五点につき、項目別の回答を1週間後の4月2日までに文書で賜りたく重ねてお願い申し上げます。細部について当方より事情説明の必要があれば、お申し出ください。なお、この件につきましては、ことの重大性に鑑み、公開質問とさせていただき、関係各報道機関にも資料として配布させていただくことを申し添えます。
藤岡信勝
敬具
以上
2.Ⅲ-1項「公開質問状」に対する朝日新聞の回答
以下、そのまま掲載します。
東京大学教授 藤岡信勝様
亜細亜大学教授 東中野修道様
1999年4月1日
朝日新聞社広報室
回答書
3月26日付で弊社社長、箱島信一あて公開質問状をいただきました。職掌上、当室からの回答とさせていただきます。ご了承ください。
1、 2月19日付朝日イブニングニュースに掲載された「NANKING BOOK IS SHELVED」の記事は、同日付朝日新聞朝刊社会面掲載の「米で50万部『ザ・レイプ・オブ・ナンキン』/日本語版の出版延期」を翻訳したものですが、時間的制約などで誤解を招きやすい表現にはなったものの、誤報ではないと考えます。日本語原文では、
(イ)電話や手紙による脅迫などがあった
(ロ)柏書房は原著者と改訂や別途同時出版の交渉をしたが、不調に終わったため、出版そのものが延期になった、という趣旨が書かれています。英文では文頭で、脅迫などのあと出版延期になった、とし、末尾で(ロ)の部分を説明していましたが、時間的制約などの新聞制作上の都合で末尾部分が欠落したものです。
結果的に不完全な記事ではありますが、脅迫と出版延期の間に時間的な前後関係があることは指摘しているものの、因果関係があるとはいっておりません。また、因果関係があるとの趣旨で英文記事を作成すれば、見出しは当然「右翼の圧力で出版延期」となるはずですが実際には単に延期とのみ表現しています。
これは、英文記事が日本語原文の趣旨を忠実に反映したことの結果です。なお、同日の英文データベースには、スペースの問題がないために末尾部分の入った記事が配信されております。
2、 当該記事の翻訳者名を公表する必要は認められません。
ただし、広報室の担当者が誤まって説明したようですがこの翻訳者は外国人ではなく日本人です。
3、 誤報ではありませんが、結果として誤解を招きやすい記事になったのは事実なので3月27日付朝日イブニングニュースに、当該記事の末尾部分を復活し、文頭部分を補った「Clarification」を掲載しました。データベースには問題がありませんでしたが念のため文頭部分で補う措置はしました。
4、 記者会見の席上、回答者が反発を感ずるような質問がなされるのは、日本国内のみならず世界各地内外の報道機関により日常的に行われていることで、とくに問題にすることではないと考えます。
5、 ご説明した通りですので、「謀略的報道」などと非難されるのは迷惑です。
以上
Ⅳ.無知で傲慢なフィクション作家アイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』
1.「レイプ・オブ・南京」邦訳刊行延期
「極右グループ脅迫」と英文「アサヒ」など誤報
中堅出版社「柏書房」が南京事件をめぐる米国のベストセラー「レイプ・オブ・南京」の日本語版刊行を著者側の意向で無期延期した問題で、英字夕刊紙「アサヒ・イブニング・ニュース」(朝日新聞社発行)などが「極右グループの脅迫によって」と間違って報道していたことが、二十五日までに分かった。
アサヒ・イブニング・ニュースは2月19日付紙面で「朝日新聞から」と出典を示した上で、「極右グループの脅迫を受けて延期した」などと報道。米紙「ロサンゼルス・タイムズ」も3月1日付社説で「極右の脅迫で」と書いた。
しかし、出版延期は、著者のアイリス・チャンさん側が事実誤認部分の修正や邦訳を補完する論文集の同時出版に難色を示したためで、朝日新聞も、柏書房とチャンさん側との確執が理由と報道している。
「レイブ・オブ・南京」のニセ写真などを追及してきた藤岡信勝・東大教授と東中野修道・亜細亜大教授はこの日、朝日新聞東京本社とロサンゼルス・タイムズ東京支局を訪れて、誤報に至る経緯の説明を求めた。藤岡教授によると、ロサンゼルス・タイムズは事実関係の間違いを認めたが、朝日新聞社は「朝日新聞の記事を英訳する際の翻訳技術上の問題だ」と説明したという。
2.正論:「南京翻訳書」を巡る謀略報道
原点は朝日新聞社の英字紙
解説書同時発行の屈辱
アイリス・チャンの著書『ザ・レイプ・オブ・南京』の日本語訳の刊行が無期延期された。この本は、そもそも反日プロパガンダのために書かれたセンセーショナルな俗悪本であるだけでなく、100箇所を越えるおびただしい誤りがあり、ニセ写真の間違いも数多く指摘されてきた。例えば、チャンは「江戸時代250年間、日本の軍事技術は弓と刀の段階を越えることができなかった」と書いている。冗談ではない。1543年、種子島に鉄砲が伝わったことは、日本人なら中学生でも知っている。
日本語版の版権を取得した柏書房(渡辺周一社長)は、歴史を中心に学術書も出版している。右のような間違いをそのままにして出版すれば一大スキャンダルになる。ところがチャンは自分の著書の修正を認めようとしない。困り抜いた柏書房は一計を案じた。それは翻訳書の欠点を補うため、チャンへの批判を含む『南京事件とニッポン人-「ザ・レイプ・オブ・南京」を正しく読むために』という解説書を翻訳書と同時に発売するというものである。二冊の本は2月25日に同時発売される予定だった。
ところが、この2冊目の本の内容を知ったチャンは激怒したといわれる。
無理もない。自分が書いた本が外国で翻訳出版される。ところが、その訳書の出版社と全く同じ出版社から、全く同時にその著書を批判する本が出版されるというのである。こんな侮辱はない。共同通信は2月19日、「今月10日、チャンさん側から『同時に刊行される解説書の出版を差し止めてほしい』という連絡があったため、2冊とも出版を延期することにした」と報じた。以上が翻訳書出版延期にいたる経過である。
3.デッチあげの捏造記事
2月25日、私は日本外国特派員協会の昼食会に招かれて、日本の歴史教育について講演した。席上、朝日新聞社発行の「アサヒ・イブニング・ニュース」の記者で英国人のピーター・マクギル氏は次のような暴言を吐いた。
「あなたは今、この国の右翼暴力団のヒーローになっている。連中は出版社を脅迫し、暴力や殺人までやってきた」。さらに昼食会の終了後、別の一人の外国人記者私に、「アイリス・チャンの翻訳書が右翼の脅迫で出版中止になったのは本当ですか」と真顔でたずねてきた。
これは大変なことになっていると私は直感した。誰かが、外国人記者の間に全くのデマ情報を流しているのである。ひょっとして、あの記者のいる「アサヒ・イブニング・ニュース」が記事として書いているのかもしれない、と思いついた。それで、同紙を取り寄せて調べてみた。
結果は、まさに私の予想どおりであった。2月19日付の「アサヒ・イブニング・ニュース」に「南京本の出版延期」という見出しで記事が掲載されている。
その書き出しの部分を訳出すれば次のようになる。「消息筋が木曜日〔2月18日〕に語ったところによれば、東京の出版社が電話や手紙による脅迫を受けて、『ザ・レイプ・オブ・南京』の日本語版の出版を延期した。……本の制作を中止したのち、柏書房が語ったところによれば、手紙のうちの一通は極右グループの構成員を名乗る男からのものであった。その脅迫状には『出版すれば何らかの行動を起こす』書かれていた」。
しかし、これがデッチ上げの捏造記事であることはちょっと常識をはたらかせればわかることである。第一に、すでに広告が出され、取り次ぎとも契約済みの本の出版を軽々しく中止するはずがない。今回の場合、印刷は当然済んでいたはずだから、出版社が被る経済的な損害は極めて大きい。第二に、ありふれた右翼の脅迫程度でそんな非合理的な行動を出版社がとるはずがない。そういう脅迫に簡単に屈すること自体、大きな恥である。第三に、もし本当に右翼の脅迫で出版が中止されたのなら、出版妨害の大事件である。すべてのメディアが大騒ぎをしているに違いない。
4.著者による出版妨害
3月3日午前、『「南京虐殺」の徹底検証』の著者・東中野修道氏と私は、東京・文京区にある柏書房を訪問し、日本語版出版延期の経過についてたずねた。
同社の佐保勲出版部長は、右翼からの脅迫が出版延期の理由だったのかという質問に、「そのこととわれわれの〔出版延期の〕決定との間に関連はない」と言明した。
また、月刊誌『創』四月号では、同社の芳賀啓編集長が「右翼よりも一般の人から間違いのまま出版していいのかという電話が多かった。しかし、困ったのはその後、出版延期が右翼の脅しがあったからだと報道されたこと。実際は著者による出版妨害だったのです」と語っている。
ところが、アメリカの新聞「ロサンゼルス・タイムズ」は3月1日の社説で「出版社に対する極右の脅迫を受けてこの出版は無期延期された」と書いた。現地では全く否定されていることが海外に報道されることによって「事実」となる。これは61年前「南京大虐殺」が捏造されたのと全く同じ構図である。
朝日新聞社はこの種の謀略報道を直ちにやめ、誤報の責任を明確にして訂正と謝罪を行わなければならない。(ふじおか のぶかつ)
やはり、というか何というか、これだから朝日系の新聞は信頼できない。歴史の真実はどうのこうのと、普段から言っているわりには、イイカゲンな記事が目立つ。講釈たれるまえに朝日新聞は、自分のところの報道姿勢を問うべきであろう。ちゃんと「謝罪」しなきゃねえ、朝日さん。
5.産経新聞平成11年2月19日朝刊より
レイプ・オブ・南京
日本語版刊行を中止
論文集同時出版「著者側からクレーム」
中堅出版社「柏書房」(東京都文京区、渡辺周一社長)が、不正確な記述やニセ写真が多数指摘されている米国のベストセラー『レイプ・オブ・南京-第二次世界大戦の忘れられたホロコースト』をそのままの内容で日本語版にしようとしていた問題で、同社は18日までに、25日に予定されていた出版を中止することを決めた。柏書房は「日本語版の不十分な点を補う論文集の同時出版について、著者側からクレームがあったため」と説明している。
『レイプ・オブ・南京』は中国系米国人の女性ジャーナリスト、アイリス・チャンさんが1997年(平成9年)11月に出版。昭和12年の南京陥落の際に日本軍が「26万人」または「35万人」の民間人を虐殺し、「2万件」から「8万件」の婦女暴行があったと根拠のない数字を挙げているほか、大虐殺の
証拠として掲載されている写真の大部分が、ニセ写真や出所不明の写真であることが明らかになっている。
柏書房は昨年5月にチャンさん側から版権を獲得し、日本語版の編集作業を始めたが、事実誤認の記述やニセ写真について、チャンさん側が修正を拒否したため、一部の誤記を除いて、そのまま和訳して出版することを決定。
日本語版の不十分な点を補う内外の研究者の論文を収めた『南京事件とニッポン人』と題した本も同時に出版することにしていた。
柏書房によると、チャンさんは論文集の出版について知らなかったが、今月8日付の産経新聞夕刊がこのことを報道したのを伝え聞き、同社に「論文集を出すのなら、日本語版の刊行は認めない」という趣旨のクレームを伝えてきた。このため、日本語版、論文集とも出版は難しいと判断、両書とも印刷作業に入っていたが、出版を見送ることを決めたという。渡辺社長は「今にしてみれば、間違いがあることを知りながら出版し、別の本で補完するという手法には反省すべき点もあった。チャンさん側には今後も修正に応じるよう要請し、出版できる道を模索したい」と話している。
チャン側が怒るのも無理はないと思う。一応むこうでは、大ベストセラーを書いた有名「ジャーナリスト」なのだから、こういう手法で自分の書いた本が日本で販売されるのには我慢ならないだろう。でも本来なら、チャンがまともな本を書けば柏書房も補完のための同時出版という措置は取らなかったはず。邦訳版を楽しみにしていたので残念。
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6.「ザ・レイプ・オブ南京」の女流作家が拳銃自殺
2004/11/12(金) 17:19:06更新
1997年に北米で出版されて大きな話題を呼んだ「ザ・レイプ・オブ南京―忘れられた第二次大戦のホロコースト」の著者、張純如(アイリス・チャン)さんが9日、ロサンゼルス市内に止めた車の中で拳銃自殺していたことが分かった。11日付で新浪網が伝えた。
張さんはアメリカ生まれ。新聞記者などを経て作家に転身し、執筆活動と講演活動を行っていた。36歳だった。突然の自殺について、ロサンゼルス市内や全米の華僑はもちろん、中国本土でも衝撃的な事件として、各メディアで大々的に取り扱われている。「ザ・レイプ・オブ南京」(原題:被遺忘的大屠殺―1937年南京浩劫)は97年に北米で出版され、第二次世界大戦中の日本軍の蛮行を初めてアメリカ市民に紹介した本として、中国で絶賛された。
同書は日本でも出版が予定されていたが、記述に誤りが多いなどの理由から、出版は中止されたもようだ。(編集担当:恩田有紀)『ザ・レイプ・オブ・南京』(『南京大虐殺:第二次世界大戦の忘れられたホロコースト』)の著者である中国系アメリカ人作家張純如さんの銅像が9日、南京大虐殺記念館に設置されました。アメリカに生まれ育った張純如さんは、第二次世界大戦期間中、日本侵略軍による南京大虐殺の歴史をより多くの西洋人に理解してもらうため、中国、日本、アメリカ三国を駆け巡り、南京大虐殺に関する第一次資料をつぶさに探した後、三年間余りをかけて『ザ・レイプ・オブ・南京』を著しました。その本は1997年に出版された後、欧米諸国で注目を集めましたが、張純如さんもまた大きな圧力を受け、それによるストレスに耐えられなくなって、2004年に自殺し、36歳でこの世を去りました。
〈連載〉アイリス・チャン『ザ・レイプ・オブ・南京』の研究〈第1回〉
日本語訳出版はなぜ挫折したか
月刊誌【正論】5月号掲載
藤岡 信勝
中国系アメリカ人の女性ジャーナリスト、アイリス・チャンの著書『ザ・レイプ・オブ・南京ー第二次世界大戦の忘れられたホロコースト』が米国でベイシック・ブックス社から発売されたのは、1997年12月のことであった。それから一年あまり、現在までにその売り上げ部数は五十万部に達したといわれている。しかし、この本の内容は、唖然とするほどお粗末なものである。
同書は南京での日本軍による虐殺数を26万または35万とし、レイプ事件を2万件または8万件としている。それらの数字には何の根拠もない。これはまじめな歴史書にはほど遠く、戦後日本の内外で南京事件に関して捏造されたウソを集大成した反日プロパガンダのための偽書である。
この連載は、『ザ・レイプ・オブ・南京』の日本語訳出版を機に、亜細亜大学教授・東中野修道氏と私が担当して、同書の内容を全面的に批判するために企画されたものであった。ところが、二月二十五日に予定されていた翻訳書の出版は突然中止となった。出版社サイドは「延期」と表現しているので、今後出版の運びに至るかもしれないが、その時期は未定である。したがって、日本語訳が出るまでは、この連載ではベイシック・ブックス社刊の英語版から訳出して検討の素材とする。
7.翻訳書と解説書のペア出版を予告
日本語版の版権は東京都文京区に所在する中堅出版社・柏書房(渡辺周一社長)が取得した。共同通信の3月4日付け配信記事によれば、同社が邦訳を決定したのは、昨年の5月だったとされる。昨年の秋には発刊の予告広告が何度か出た。しかし、実際は、その都度発刊は延期されてきた。翻訳作業自体はそれほど手間取るはずがないので、発刊の遅れがそれ以外の原因であることは明らかだった。それは、原著におびただしい誤りがあり、それをどう処理するかという問題であったであろうことも容易に想像がつく。私たちは、翻訳書がそれらの間違いをどう扱うか、実は興味津々と見守っていたのである。
2月8日付け夕刊の産経新聞は、社会面トップで『ザ・レイプ・オブ・南京』の翻訳書出版についての記事を掲載した。その見出しは、〈レイプ・オブ・南京/修正せず日本語版刊行へ/出版元「著者の希望」/事実誤認を黙殺/ニセ写真、そのまま掲載〉というものであった。
その記事のポイントは二つある。一つは、出版元の柏書房が本の内容に「事実誤認があることは知っているが、著者の要望で手を加えなかった」というものである。ただ、東京日日新聞を「ニチ・マイニチ新聞」としているなど、約十カ所の誤記を改めることにだけはチャンは同意した。一方、ニセ写真の方は米国の砲艦「パネー号」として掲載された写真についてだけは、その後米国で出版されたペーパーバック版でも正しいものと差し替えられており、日本語版ではその差し替えた方の写真が掲載されるという。
もう一つは、翻訳書『ザ・レイプ・オブ・南京』の不十分な点を補うものとして、内外の研究者の論文を集めた『南京事件とニッポン人』という本を翻訳書と同時に発売するというものである。この2冊は、2月25日に同時に発売されることになったという。
以上が、産経新聞2月8日付け夕刊記事の内容である。
柏書房が出した「二月の新刊」というチラシによれば、2冊目の本には「『ザ・レイプ・オブ・南京』を正しく読むために」というサブタイトルが付けられている。これは翻訳書本体に対する一種の解説書という位置づけである。編者は「大虐殺派」の中心人物の一人である藤原彰氏で、収録される論文には「『ザ・レイプ・オブ・南京』のもつ意味と問題点」(井上久士氏執筆)など日本人研究者の論文のほか、アイリス・チャンの議論の進め方に一部批判的なスタンスをとっている、チャールズ・バレス、リチャード・フィン、デビッド・ケネディなど、アメリカの学者やジャーナリストの文章も含まれることになっていた。
では、柏書房は、なぜ、このように二冊同時発売といった方針をとったのだろうか。その理由を理解するためには、『ザ・レイプ・オブ・南京』が発売されて以後一年あまりの動向を全体として見なければならない。
8.日本国内における活発な批判活動の展開
アメリカ国内では、日本政府、なかんずく外務省の姿勢が災いして、「南京大虐殺」は確定した「史実」となりつつある。特に昨年12月の初め、斎藤邦彦大使がテレビでアイリス・チャンと討論したことが決定的な失敗だった。その放送のビデオは私も取り寄せて見たが、斎藤大使は、チャンの攻撃に対し、南京事件に関するチャンの言いたい放題の発言にはただの一言も反撃せず、日本は謝罪していること、日本の歴史教科書は南京事件について書いていること、の二点だけを反論のポイントにした。
そのため、この放送を見ていたアメリカ人は、今まで疑いをもっていた人も含めて、「もうこれで大虐殺があったことは確定した」という受け取られ方をしているという。日本政府の立場を正式に代表する大使の発言なのだから、そう取られても仕方がない。チャンの本を使った反日運動は、それ以来一層盛り上がっているというのである。
しかし、目を日本国内に転ずれば、そこではこの一年間に、かつてないほど活発にチャンの反日偽書に対する批判活動が展開されてきたのである。その動向を最も特徴的な三点にわたって述べてみたい。
第一に、プロパガンダ写真による歴史の偽造を暴露する組織的な活動が行われたことである。南京事件についてはさまざまな議論があるが、甲論乙駁を読んでもなかなか初心者には真相が分かりにくい。
そうしたなかで一番影響力をもってしまうのは、実はプロパガンダ用にしつらえられたニセ写真なのである。ことに学校現場では、写真のもつ効果は極めて大きい。いかに百万言を費やしても、「だって写真で見た」という子どもたちにことの真相を理解させるのは至難の業である。お人好しの日本人は国際政治の過酷な現実を知らないから、政治的な目的でウソの写真が国家の手によって組織的に偽造されているなどとは想像もできない。だから、反日・自虐史観を克服するためには、写真のウソを積極的に暴露していくことが効果的なのである。
こうした観点から、自由主義史観研究会では様々な世代のメンバーを糾合して、「プロパガンダ写真研究会」を組織し、『ザ・レイプ・オブ・南京』が出版された直後から同書に登場するニセ写真の検証作業を続けてきた。この間、産経新聞は社としての独自の取材をも交えて、同会の検証作業の成果を系統的
に報道してきた。こうして、チャンの本にはおびただしいニセ写真が使われているらしいという知識は、いくらかでも南京事件に関心を持つほどの人の間では、もはや常識になっていたのである。
第二は、日本の雑誌ジャーナリズムがチャン本の批判にかなり積極的に取り組んだことがあげられる。『諸君!』四月号の秦論文を皮切りに、同誌五月号にはこの文藝春秋北米総局長・塩谷紘氏の現地レポート「外務省は『反日偽書』になぜ沈黙するのか」が載った。また、『正論』七月号には、鍛冶俊樹氏が「アイリス・チャン『レイプ・オブ・南京』の驚くべき背景」を書き、『文藝春秋』九月号には浜田和幸「『ザ・レイプ・オブ・南京』中国の陰謀を見た」が掲載された。この間、柏書房の「解説本」に収録されるデビッド・ケネディらアメリカ人の見方も日本の各種の雑誌で紹介された。
さらに、これらを取り巻く状況として百万人の観客を動員した映画「プライド」の成功や、小林よしのり氏の漫画『戦争論』が五十万部をこえる大ヒットとなったことなどがあげられる。これらは南京事件そのものを中心テーマとした作品ではないが、戦争という大きな文脈のなかで南京事件における「大虐殺」がありえないことが説得的に描かれており、活字中心の媒体とは異なる映画や漫画といったメディアのもつ影響力の大きさを示したといえる。
第三に、南京事件そのものの学問的・実証的な研究が過去一年間で大きな飛躍を遂げたことをあげなければならない。この点でとりわけ特筆すべきは、昨年の八月に、東中野修道氏が八年間にわたる研究の成果をまとめた『「南京虐殺」の徹底検証』(展転社)が刊行されたことである。同書は、いわば「大虐殺なかった派」の立場を、広範な史料研究と明確な論理によって説得的に展開した本である。この本の出現によって、南京事件の研究は新しい段階に入ったといえる。同時に、同書によってアイリス・チャン『ザ・レイプ・オブ・南京』の批判のための学問的な橋頭堡が築かれた。
以上のべた、「写真」、「メディア」、「研究」の三つの分野の動向が相乗効果をもたらして、『ザ・レイプ・オブ・南京』の翻訳が出る前から、この本は間違いだらけの本らしいという常識が日本国内では多くの人々の間に共有される状況になった。
9.中学生も笑い出す間違いの山
実際、『ザ・レイプ・オブ・南京』に含まれる間違いは数においても質においても言語を絶するものである。例えば、チャンは「江戸時代250年間、日本の軍事技術は弓と刀の段階を越えることができなかった」(ベイシック・ブックス版原著21ページ)と書いている。冗談ではない。1543年、種子島に鉄砲が伝わったことは、日本人なら中学生でも知っている。鉄砲が伝来するや、日本人はたちまちこれを自家薬籠中のものにした。日本は自前で優秀な鉄砲を生産し、その生産量は世界一であった。日本文明についての基礎的な理解を欠き、日本は極東の野蛮国にすぎなかったという程度にしか考えない中華思想にチャンはどっぷりと浸かっているらしい。
もう一つの例を引用しよう。
「日本人に特異な性格をもたらしたもう一つの要因は、孤立ということであった。それは地理的な意味での孤立と自己規制的な意味での孤立の両方を含んでいる。15世紀の終わりから16世紀のはじめの時期までに、日本は徳川氏の支配をうけるようになっていたが、徳川氏はこの島国の国民を外国の影響から遮断したのである」(20~21ページ)。
この引用を読んで、読者はこの著者をどの程度の人物と思うだろうか。日本を見下した高慢ちきな中国人が、わかりもしない受け売りの知識を振り回していることだけは間違いない。しかし、私は、ここで、「鎖国はあったのか」などという高級な問題をこの著者にぶつけようというのではない。そんなことはこの著者には無意味なことである。私が問題にしたいのは徳川氏の支配、すなわち江戸時代のはじまりを、「15世紀の終わりから16世紀のはじめの時期」としていることである。江戸幕府のはじまりが1603年であることは、日本人なら小学生でも知っている。しかし、考えてみれば、記録の上でたかだか10件程度しか確認できない南京城内の日本軍兵士による強姦事件を、何の根拠もなく「2万件」に水増しして平然としている著者のことだから、それに比べれば日本の歴史を100年くらい誤魔化すのはかわいらしい間違いというべきなのかもしれない。
この例は南京事件とは直接関係がないという人がいるかもしれないから、今度は南京事件について書いた部分から引用しよう。40ページには、次のような記述がある。「朝香宮の情報将校だったタイサ・イサモがのちに友人に告白したところによれば、[捕虜は皆殺せの]命令を案出したの彼自身であった」。
「タイサ・イサモ」なる人物は日本陸軍には存在しなかった。「タイサ」は「大佐」のことであろう。「イサモ」が「イサム」の間違いであるとすると、チャンはここで実在した人物「長勇大佐」に言及しようとしたのであろう。ただし、長はこの当時は中佐であったが、それはおくとしよう。問題は、チャンが日本軍の階級呼称の一つである大佐を日本人の名前の一部だと思い込んでいることだ。私はチャンの本を愛読している善良なアメリカ人に問いたい。「ジェネラル・マッカーサー」の「ジェネラル」をマッカーサーのファースト・ネームだと思い込んでいるような知識しか持たない日本人が、えらそうにアメリカ人の性格を批判する本を書いたとして、それをあなたがたアメリカ人はまともに相手にするかということである。
昨年の九月二十六日に開催された自由主義史観研究会主催の集会において東中野氏は、その時点までに気付いたチャンの本の中の間違いを列挙した資料を配布した。それは実に九十項目におよぶリストであった。同氏の手もとのリストは今も増え続けている。このように、日本人なら中学生も笑い出すような間違いを含めて、おびただしい間違いをチャンは彼女の本の中で書き散らかしているのである。
10.柏書房が陥ったディレンマ
『ザ・レイプ・オブ・南京』の日本語版の版権を獲得した柏書房は、翻訳・編集の作業を進めるうちに、深刻なディレンマに直面したはずである。なにしろ、こんなひどい間違いを放置したまま、そのまま訳出するわけにはいかない。すでに明らかになった写真の間違いもおびただしい。
出版社にとって一番よい選択肢は、何も断らずに、チャンの間違いを日本語版でそっと直してしまうことである。あまりにひどい写真も掲載しないことだ。しかし、それは、著者との出版契約上、できなかったに違いない。
そこで、第二の選択肢は、間違いはそのまま訳して、その間違いに注記をつけることである。これでは原著のひどさが浮き彫りになってしまうが、それでもウソをそのまま活字にするよりはマシである。しかし、これも著者は拒否した。チャンにすれば、日本人は何をゴチャゴチャ言っているのか、私の本は全体として「第二次世界大戦の忘れられたホロコースト」、「覆い隠されていた歴史の真実」を明らかにしたのだから、小さなミスなどたいした問題ではない、という思いであったろう。日本人は、自分の本をキズものにするつもりか。
それでも、チャンは、写真一葉の差し替えと、十カ所程度のミスの修正には応じざるを得なかった。しかし、これは、焼け石に水である。それ以外の写真と事実誤認は、版元もその間違いを承知の上で、出版しなければならないからである。では、実際にそうしてしまえばよかったのではないか。つまり、著者の言いなりになってそのまま出版するという第三の選択肢もあったのではないか。しかし、柏書房は、この第三の選択肢をとることはできなかった。そこには、次の二つの事情があったと思われる。
第一に、柏書房は左翼系の出版社の一つではあるが、歴史を中心としてしっかりした学術書をかなり出版している実績がある。キワモノを手がける出版社なら第三の選択肢もあっただろうが、柏書房がそんなことをすれば、会社の信用にキズがつくだけでなく、同社から本を出している他の著者の名誉にもかかわることである。そもそも、歴史書の出版社が、江戸時代は十五世紀の末から十六世紀のはじめに確立したなどと書いた本を出版したら、出版史上の一大スキャンダルである。
第二に、『ザ・レイプ・オブ・南京』の翻訳書の出版は、企業としての営利活動の一つであると同時に、「自虐派」の運動の一環に組み込まれた事業である。だから、企業にとっての利益だけではなく、出版がその運動の利益になるかどうかをも考慮せざるを得ない。もし、このまま出版すれば、反対派の総攻撃を浴び、運動にとって逆効果になるだろう。中学生や高校生の間違い探しのゲームのタネにされるだろう。そして、こんな愚かな間違いをしている著者が、南京事件
についてだけは百パーセントの真実を書いているなどとは誰も思わなくなるだろう。つまり、このままで翻訳書を出版することは、日本国内での反対派にかえって勢いを与える逆効果になる危険があるのだ。実際、反対派のひとりである私自身がそう考えてきたのだから、「自虐派」もそう考えて当然である。
このように、抜き差しならないディレンマに追い込まれた出版社が苦し紛れに考え出したのが、第四の選択肢であった。つまり、翻訳書を誤りの修正なしに出版するキズを埋め合わせるために、その解説書を同時に出版するのである。そして、その中で「大虐殺派」の学者が、チャンの本の間違いを指摘しつつ、しかし、この本は南京事件を英語圏に知らせた画期的な意義があると評価する。大体、こんな組み立てで柏書房は困難を乗り切ろうとしたのである。まさに苦肉の策であった。こうして、二冊の本の発売日、2月25日を迎えようとしていた。前日の24日には、これらの本のお披露目のため、外国特派員協会での記者会見も予定されていた。
11.発売延期に追い込まれる
事態が急転したのは、発売日まで二週間を切ったころである。小売り書店が取り次ぎ店に送った注文の短冊が返送されてきたのである。それには次の文書が添えられていた。
「2月下旬発売予定の『ザ・レイプ・オブ・南京』は発売延期となりました。ご迷惑をおかけいたしますが、スリップを返送させていただきます。
詳細未定につき、後日あらためてご案内申し上げます。 柏書房(株)営業部」。2月19日、日本の各紙はいっせいに日本語訳の著書の出版延期を報道した。共同通信の同日付け配信記事は、出版延期の理由について、「写真の誤用や事実誤認」などが早くから指摘されてきたことをのべたあと、次のように書いた。
「柏書房は、歴史事実の誤認などの点についてはチャンさんが認めた範囲で修正し、25日に出版する予定だった。さらに、原作への反論などを集めた解説書も同時に刊行することになっていた。しかし、今月10日、チャンさん側から『同時に刊行される解説書の出版を差し止めてほしい』という連絡があったため、二冊とも出版を延期することにした。同社は『とりあえずチャンさんの真意を確認中』と突然の差し止め要求に困惑している」。
では、なぜ、チャンは2月10日になって「解説書」の出版を差し止めると言ってきたのだろうか。直接の引き金は2月8日付け夕刊の産経新聞の記事(前出)であった。この記事を読んだ朝日新聞の記者がチャンにインタビューをした。ところが、チャンは、解説書のことを知らなかった。未確認情報だが、この時チャンは激怒したと言われる。考えてみれば、これは当然のことだ。自分が書いた本が外国で翻訳出版される。ところが、その訳書の出版社と全く同じ出版社から、全く同時にその著書を批判した本が出版されるというのである。こんな侮辱はない。柏書房側にすれば、藤原彰編の論文集は、チャンには関係のないことであり、チャンに知らせる必要はないと判断したのだろう。苦肉の策が裏目に出てしまったのである。
12.朝日系メディアの謀略的報道
アイリス・チャン『ザ・レイプ・オブ・南京』の日本語版訳書の出版が挫折した経過は右にのべたとおりだが、これは言うまでもなく反日勢力にとっては大きな痛手であった。そこで彼らの一部は、驚くべきデマを流すことをあえて行った。そのデマに私が気付いたのは、ある偶然のキッカケによってだった。
2月25日、私は東京・有楽町にある日本外国特派員協会の昼食会に招かれて、日本の歴史教育について講演した。この席で「アサヒ・イブニング・ニュース」の記者で英国人のピーター・マクギル氏は次のようなとんでもない質問をした。「あなたが意図してのことだとは思わないが、あなたは今、この国の右翼暴力団のヒーローになっています。連中は出版社を脅迫し、暴力や殺人までやっている」。さらに昼食会の終了後、別の一人の外人記者が私に、「アイリス・チャンの翻訳書が右翼の脅迫で出版中止になったのは本当ですか」と真顔でたずねてきたのである。これは大変なことになっていると私は直感した。
誰かが、外国人記者の間に全くのデマを流しているのである。それは、口コミなのだろうか、とも思った。しかし、ひょっとして、あの悪質な「アサヒ・イブニング・ニュース」の記者が記事として書いているのかもしれない、と思いついた。それで、同紙を取り寄せて調べてみた。
結果は、まさに私の予想どおりであった。二月十九日付けの「アサヒ・イブニング・ニュース」に「南京本の出版延期」という見出しで記事が掲載されている。執筆した記者の署名はない。その書き出しの部分を訳出すれば次のようになる。「消息筋が木曜日[2月18日]に語ったところによれば東京の出版社が電話や手紙による脅迫を受けて、『ザ・レイプ・オブ・南京』の日本語版の出版を延期した。本の製作を中止したのち、柏書房が語ったところによれば、手紙のうちの一通は極右グループの構成員を名乗る男からのものであった。
その脅迫状には『出版すれば何らかの行動を起こす』と書かれていた」
しかし、これがデマであることはちょっと常識をはたらかせればわかることである。第一に、すでに広告が出され、取り次ぎとも契約済みの本の出版を中止するということは、出版社にとっては死活問題である。今回の場合、発行予定日から見て、印刷は当然済んでいたはずだから、出版社が被る経済的な損害は極めて大きい。出版社は取り次ぎその他に対する社会的信用をも失墜する。
第二に、右翼の脅迫程度でそんな非合理的な行動を出版社がとるはずがない。ある種の言論人にとって右翼の脅迫が日常茶飯事であるのは、別のある種の言論人にとって左翼の脅迫が日常茶飯事であるのと同じことである。そういう脅迫に簡単に屈服すること自体、大きな恥である。
第三に、もし本当に右翼の脅迫で出版が中止されたのなら、これはもう出版妨害の大事件である。ただごとではすまない。すべてのメディアが大騒ぎをするに違いない。また、それだけ報道する価値のある重大事であることに間違いはない。このように、どの角度から見ても、「アサヒ・イブニング・ニュース」の記事がデッチあげの捏造記事であることは明らかなのだ。
3月3日午前、東中野修道氏と私は東京・文京区にある柏書房を訪問し、日本語版出版延期の経過についてたずねた。応対に出た同社の佐保勲出版部長は、延期の理由について「著者のほうから意見があり、著者と話を詰める必要を感じたので延期した」とし、右翼からの脅迫が出版延期の理由だったのかという質問には「そのこととわれわれの[出版延期の]決定との間には関連はない」と明確に否定した。また、月刊誌『創』四月号では、同社の芳賀啓編集長が「右翼よりも一般の人から間違いのまま出版していいのかという電話が多かった。しかし、困ったのはその後、出版延期が右翼の脅しがあったからだと報道されたこと。実際は著者による出版妨害だったのです」と語っている。朝日新聞社は誤報の責任を明確にして、訂正と謝罪を行わなければならない。
13.「自虐史観」との闘いの新しい段階
アイリス・チャン『ザ・レイプ・オブ・南京』の翻訳書の刊行が挫折したことは、日本における「自虐史観」との闘いが、新しい段階に到達したことを明瞭に示すものである。柏書房の出版延期の決定は、チャンの本が反日プロパガンダの目的で書かれた本であるというその本質から生じたものである。それは、決してまぬかれることのできない矛盾なのである。しかし、その矛盾を顕在化させたのは、この一年あまりの間に展開された同書に対する活発な批判活動であった。この出版延期はそれらの意識的な取り組みの成果でもあるのだ。
もちろん、私たちは自由な言論を断じて擁護する。むしろ、翻訳書『ザ・レイプ・オブ・南京』の一日も早い出版を待ち望んでいる。
しかし、研究、運動、メディアの、どの領域においても、もはや、かつてのように一方的な宣伝がノーマークで浸透する時代ではなくなっている。日本人に「自虐史観」を植え付けるための最大の「教材」となってきた「南京大虐殺」のウソ